赤いギターと白い雲
ベンチャーズとともに駆け抜けた青春

            12.空白の時(1)

 6年間通った小学校に別れを告げるときがやって来た。
 毎日楽しい学校生活を送って来た秀としては、非常に名残惜しい気分であった。
 ただ、クラスメートのほとんどが、秀と同じ中学へ進学することが分かっていたので、それだけが救いであった。
 もちろん、渋山ゆりも一緒である。

 ザ・ルネッサンスは、クリスマス会での演奏が好評だったので、3月に入ってのお別れ会でもステージに立った。前回と同じく、女の子達の反応もよく、メンバー全員大いに気をよくして、小学校生活最後の思い出を作る事ができた。

 秀としては、このメンバーで中学に入っても活動を続けたかったのだが、残念なことに、弘一は私立の中学に進学することになり、ノリヒロは父親の転勤で四国の高松に引っ越すことになっていた。
 勇は、中学ではバレーボール部に入ると言った。
 この時期、彼ら以外のメンバーを探すのは、至難の業であった。

 やがて秀は中学に入学、小学校卒業間近にテレビで見た、ボクシングの世界タイトルマッチに衝撃を受け、趣味がギターからボクシング観戦へと移っていく。
 ボクサーは毎日走らなければならない、と本で読んだ秀は陸上部に入り、長距離の選手として汗を流す毎日であった。

 音楽的には、テレビやラジオで流れる日本の流行歌や、外国のポップスを何とはなしに聴く程度で、あれだけ衝撃を受けたはずのベンチャーズは、ほとんど頭の片隅に追いやられつつあった。

 ある日、同じ陸上部の桜木直人とレコード屋に入った。桜木は秀が小学生の時に、よく「ベンチャーズ・イン・ジャパン」を聴かせてもらいに行った、あの友達である。
 そのせいか、何気なくベンチャーズのコーナーに目が行ったのだが、数枚あったレコードを一枚一枚めくって、ジャケットを見た秀は愕然とした。
「これの何処がベンチャーズなんだよ!?」

   

 メンバー全員普段着のような格好で、ボブやメルはもみ上げを長く伸ばし、ドンはヒゲをたくわえて、サングラスまでかけている。しかも、全員長髪で、なんだか柄の悪いバンド、という感じであった。
 ベンチャーズといえば、ビシッとしたオール・バックに、揃いのスーツというイメージがあった秀には、ちょっとショックが大きかった。

 何よりも決定的だったのは、あのノーキー・エドワーズの姿がなかった事であった。リード・ギタリストが替わったベンチャーズは、完全に秀の興味の対象から外れてしまった。

 思えば、この時のメンバーは、ジェリー・マギー、ジョン・ダリルをフィーチャーした5人編成であり、そのサウンドはホットでエキサイティングなものであったのだが、秀がそれを認識するのには「ベンチャーズ・オン・ステージ'71」を購入する、数年後を待たねばならなかった。

             

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