赤いギターと白い雲
ベンチャーズとともに駆け抜けた青春

           11.GSをやろう!(5)

 ステージに上がって、秀とノリヒロは軽くチューニングのチェックをした。弘一がスネアの角度とシンバルの位置を調整し、準備が整った。
 秀が、歌い出しのガイドのコードを小さく弾き流し、弘一が力強くカウントする。
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
 ワイルド・ワンズの「愛するアニタ」だ。 出だしの「Oh!」をバックの3人で叫び、後を勇の熱唱が引き継ぐ。
 吹奏楽部で鍛えた弘一の正確なリズムに乗って、秀のコード・カッティングが炸裂しノリヒロのバッキング・フレーズが彩りを加える。

 女の子達は、早くもリズムにあわせて体を左右に揺らし、手拍子をしている。
 秀は、ギターをかき鳴らしながら
「ああ、今日の俺達って、もしかしたら、カッコいいかもしれない。」
などと思った。男は皆、ギターを持ってステージに立てば英雄になれる時代だったのだ。

 演奏前の緊張感にもかかわらず、たいしたミスもなく一曲めが終わった。弘一のカウントに続いて、秀のギターからダブル・ノートのイントロが流れ出す。ノリヒロはバックでベースのフレーズを弾いている。
 タイガースの「青い鳥」だ。練習の時と変わらぬ勇と秀の、哀愁のハーモニーが教室内を切なく包み込んだ。
 勇は、歌いまわしやイントネーションまで、すっかりジュリーのクセを物にしている。
 一曲めで加瀬邦彦になりきっていた秀も、ここではタローに早替わりしていた。

 「青い鳥」に続き、これも少ししっとりとした曲調の「涙の季節」を演奏する。ピンキーとキラーズの「恋の季節」に続く、スマッシュ・ヒットだ。弘一がパーカッションの専門家らしく、スティックを寝かせてリム・ショットで叩き、勇は女性ヴォーカルの歌を自分なりに消化して客席に訴えかける。
 秀と弘一はキラーズさながらのスキャットでコーラスでバックを支え、ノリヒロも緊張で少し硬かったが、がんばって間奏のソロを弾ききった。

 そして、この日最後の曲になった。喋りが苦手な勇にかわって、秀が紹介する。
「それでは、最後の曲です。テンプターズの『純愛』をやります。」
 その途端、ショーケン・ファンの仁村洋子あたりから「キャーッ」という黄色い声援が飛んだ。
「やっぱり、今日の俺たち、絶対にカッコいい!」
と、秀は改めて思った。
 8ビートの乗りのいいイントロが終ると、一転して静かな歌いだし。勇はショーケンさながらに、耳に両手を当てて悲痛な表情で唄い出す。

♪どうして・・・・・わかってくれないの・・・・・。
       僕らは若いけど 愛に生きている ♪


 再び弘一が力強く8ビートを叩き出し、秀とノリヒロは、はじけるようにギターを刻む。
 勇がサビのメロディーを絞り出すように歌い、教室内を興奮のるつぼに変えると、秀は松崎由治になりきって、とっておきの速弾きを決めまくった。

 こうして、秀とノリヒロと弘一、そして勇の、初めての「コンサート」は、大好評のうちに幕を閉じた。
 四人がステージを降りると、ヴォーカルの勇は、
「カッコよかったー。もっと聴きたい!」
と興奮覚めやらぬ仁村洋子や中田信子につかまっていたが、秀には渋山ゆりが、
「素敵だったわ」
とささやいてくれた。
 秀にとって、生まれてから一番自分が輝いていた、と感じた瞬間であった。

            

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