赤いギターと白い雲
ベンチャーズとともに駆け抜けた青春

          GSをやろう!(3)

 メンバーも四人集り、グループ名も決まった。
 「ザ・ルネッサンス」は、さっそく練習を始めた。
 厳密に言うと、まだベーシストが存在していない。しかも、クリスマス会当日のセッティング予定楽器は、スチール弦を張ったクラシック・ギター2本に、スネアとスタンド・シンバルだけである。ちょっと見ただけでは、大正テレビ寄席か、笑点に出てくるコミック・バンドである。
 それでも、仲間四人でグループとなって演奏する事が大事なのであり、秀も勇もノリヒロも弘一も、それだけで十分満足していた。

 本番までの約一ヶ月、四人は毎日誰かの家に集っては練習を続けた。
 秀は、弘一のために、練習用のスネア・ドラムとシンバルを作った。
 父親宛にお中元で贈られてきたビールのダンボール箱に、響線がわりに「ウーウー紙」を貼った物がスネア。「ウーウー紙」のザラッとした音が、なかなかスネアっぽくて、心地よい。
 シンバルには鍋のふたを使ったが、木工用の角材でスタンドを作り、さらに単語カードを綴じる金属の輪を繋ぎ合わせたものを、上に乗せた。理論的には「シズル・シンバル」であり、叩くと「ジャラララ〜〜〜ン」と残響の長い、鍋のふたとは思えない音がでた。
 どちらも本物の代用品としては、まあまあの出来で、弘一も「よく考えたね」と感心した。

        

 四人は話し合って、当日のレパートリーを決めた。といっても、ほとんど勇と秀が提案し、ノリヒロと弘一が同意する、という形であったが。

 オープニングに、ワイルド・ワンズの「愛するアニタ」を持ってきて、その後タイガースの「青い鳥」が続き、3曲目にはピンキーのファンだった秀のリクエストで、ピンキーとキラーズの「涙の季節」が入る。
 ラスト・ナンバーとして、勇が「どうしてもやりたい」というテンプターズの「純愛」を、ビシッと決める手はずであった。

 問題は、ギタリストである秀とノリヒロのアンサンブルであった。ついこの間ギターを始めたばかりのノリヒロは、当日までに、すべての曲のコードを滑らかにチェンジできそうにない。
 そこで、イントロや間奏が、比較的単純なメロディーの曲は、リード・ギターをノリヒロに任せ、秀はコードやバッキングに回ることにしたが、「青い鳥」のダブル・ノートのイントロや間奏、「純愛」の間奏の速弾きは、ノリヒロにコードを特訓してもらい、秀の見せ場を作らせてもらった。

 コーラスは、秀と弘一が担当、特に「涙の季節」での弘一の裏声によるハーモニーが絶品であった。

 12月に入り、クラスの中では、次第にクリスマス会への熱意が、徐々に高まりつつあった。
 休み時間になると、グループを組んだもの同志、当日の出し物についての打ち合わせが頻繁に行われた。

 ある日の昼休み、渋山ゆりが、
「虹沢くんたち、グループ・サウンズやるんですってね。素敵だわ。」
と話しかけてきた。秀は高鳴る胸を押さえつつ、わざと平静を装って答えた。
「うん。渋山さんたちは何をやるの?」
「私たちは劇をやるの。なかなか台詞が覚えられなくて・・・。虹沢くんたちの演奏、楽しみだわ。がんばってね。」
 ゆりに励まされた秀は、一層のやる気がみなぎってくるのであった。

             

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