赤いギターと白い雲
ベンチャーズとともに駆け抜けた青春

           7.GSをやろう!(1)

 秀と角山 勇、渋山ゆり、日野原ゆきえの四人の集りは、いつの間にか自然解散してしまった。かといって、別に仲が悪くなった、という訳でもない。四人で集って遊ぶ、という形態に、なんとなく飽きがきた、という感じであった。
 教室では、ゆりは相変わらずさわやかに接してくれたし、むしろ女の子の間では、「虹沢クンと渋山さん、熱い、熱い」なんて噂もない事はない、ぐらいいい感じの間柄であった。

 秀と勇は、時おりお互いの家に行っては、GSの真似事をして遊ぶようになっていた。
 といっても、勇の歌に秀がギターで伴奏をつけるだけのことであったが、GSの曲を自分達の歌と演奏でプレイする事自体に意義があった。
 勇はタイガース、テンプターズのナンバーがお気に入りで、B面の曲までしっかり覚えていた。特にタイガースの「君だけに愛を」の、B面の「落ち葉の物語」が十八番だった。



 秀は、ワイルド・ワンズが一番のお気に入りであったものの、「君だけに愛を」の加橋かつみや、テンプターズの「エメラルドの伝説」における松崎 由治の速弾きにも、十分ノック・アウトされていて、コピーできないまでも、雰囲気だけを真似て、悦に入っていた。

 秀と勇のレパートリーの中では、タイガースの「青い鳥」が出来がよかった。勇はジュリーの声に敏感で、ジュリーのパートを完璧に覚えていたので、秀がタローのパートで合わせると、気持ちよくハモった。

 夏が過ぎ、2学期も中頃にさしかかった10月のある日、同じクラスの兼田ノリヒロが、
「僕もギターやりたいな。仲間に入れてよ。」
と言ってきた。勇と二人だけの練習に物足りなさを感じていた秀は、もちろん二つ返事で快諾した。

 ノリヒロはギターを持っていなかったが、母親に買ってもいいという承諾を得ているという。
 それならば、という事で、さっそくその日の放課後、秀はノリヒロのギター購入に付き合うことにした。
 近所の商店街に、現在のディスカウント・ショップの走りとも言うべき店があった。その名も「安い店」、釣り竿からちり紙まで、種々雑多な商品が、店内に所狭しと並べられている。ノリヒロは、母親から千円札2枚をもらってきていた。
 昭和40年代とはいえ、まともな楽器屋で買ったら、とてもそんな値段では買えない。ところが、この店にはしっかり「1,900円」という、エコノミーというのか、リーズナブルというのか、「GSごっこ」をする小学生にとって、実にうってつけのギターが、天井からぶら下がっていたのであった。
 ちなみに、この店にはエレキ・ギターも置いてあったが、いかに「安い店」とはいえ、1万円以上の値段がついていて、とても手が出なかった。

 百円のお釣りをもらって、1,900円のギターを自分の物にしたノリヒロが、
「君んちで早く教わりたい。」
 と言うので、二人は弾む気持ちを押さえきれずに、走って秀の家に駆け込んだ。
 台形のダンボール箱から取り出したギターは、薄茶色のサンバーストのボディーで、さすがに新品なので、スベスベと光っていた。
 秀のギターは、もう少し色が濃かったが、やはり茶系のサンバーストだった。
 「お揃いだね。グループ・サウンズみたいで、かっこいいじゃないか。」
 と、二人は他愛もなく喜んだ。

 何年かキャリアのある秀に対し、ノリヒロはまったくの素人であった。秀はノリヒロに「ドレミファ」から教えなければならなかった。
 イメージとしては、ノリヒロにコードを刻んでもらい、秀自身はテンプターズの松崎 由冶のような速弾きをバッチリ決めるはずだった。
 しかし「F」が押さえられないノリヒロと、本物のGSのようにカッコイイ演奏ができるようになるのは、まだまだ先のことであるように思われた。
        

             

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