27.T.A.D.誕生秘話(2)

 三人はその日の放課後、お互いのクラブ活動を終えた後、柏駅近くの餃子専門店「ホワイト餃子」に寄り道して、餃子をつつきながら、バンド名を決める話し合いの続きを行なった。


         現在のホワイト餃子柏店のメニュー


 昼休みの終わりの方では、三人ともベンチャーズからかけ離れてしまい、収拾がつかなくなっていたので、秀は一度原点に戻そうと思った。
「やっぱり、ベンチャーズに関連のある名前がいいと思うんだよ。ベンチャーズと似た語呂というのは無理だから、ちょっと頭に足して、アドベンチャーズというのはどうだろう?」
 秀の提案に、丈がわずかにうなずいた。
「うん、まあまあかな。」
 すると浩二が、
「なまじ『ベンチャー』が入っているから、かえって頭の『アド』が、ちょっと目障りだな。どうせなら、もっと長くしちゃおうぜ。」
「もっと長く?」
「そう。ダイナミックスも入れちゃうんだよ。」
 ドン・ウィルソンがいないという理由で、ダイナミックスを見に行かなかった浩二にしては、意外な意見だった。おそらくダイナミックスを見て以来の、秀と丈の入れ込みようを見て、浩二なりに気を使ったのかも知れないが、語り口が冷静な分、言葉の響きに説得力があった。
「え、じゃあ、ダイナミック・アドベンチャー?」
 丈の言葉に、浩二は右手の人差し指を立てて、横に振る。
「ノー、ノー。ダイナミック・アドベンチャーでは、ちょっと大げさではずかしい。逆にするんだ。」
 今度は秀が相槌をうつ。
「アドベンチャー・ダイナミックスか。」
 すると浩二は、またしても人差し指を横に振る。
「チョッ、チョッ。アドベンチャーは名詞だから、形容詞に変えないと。アドベンチャリー・ダイナミックスだな。」
 秀と丈は顔を見合わせ、首をかしげる。丈が12個目の餃子を箸でつまみながらつぶやいた。
「なんだか、道に迷っているうちに、変な所へ来ちゃったみたいな感じだけど。」
 丈の言葉ももっともなのだが、昼間からずっと話し合いが続き、三人とも疲れてきていた。こんな時は、ちょっと強引なくらいの意見が、ありがたいものだ。「こうだ」という勢いのあるものが、通ってしまうものなのだ。
 浩二が続ける。
「ジ・アドベンチャリー・ダイナミックス、これでは長ったらしいので、普段は頭文字で呼ぶことにしよう。バンド名を縮める時は、3文字あった方が座りがいいから、冠詞も含めて、T.A.D.だ。」
「T.A.D.? なんだか、カセット・テープか航空会社みたいだけど。」
 丈が笑う。秀も半分首をかしげながらも、一見筋道の立った浩二の意見に寄り切られた。
 なにより、文化祭まであと何日もない。とりあえずでも、ここでバンド名を決めておかなければならない。
「T.A.D.ね。うん、それで行こう。」
 
 こうして、秀、丈、浩二のグループ名は決まった。あとは、文化祭本番に向けて、最後の調整をするのみであった。