24.グループ結成前夜(4)

 散々なステージ・デビューを果たした秀であったが、落ち込んでいる暇はなかった。春休みを前に、軽音楽クラブのコンサートを控えていたからである。

 軽音楽クラブでは、1〜2カ月に1度、音楽室や視聴覚教室を借りて、放課後にコンサートを開いていた。
 吉田拓郎や泉谷しげる、井上陽水、ケメといった、フォーク畑の部員から、クリーム、グランド・ファンク、ローリング・ストーンズ等の海外ロック・アーチスト派の部員、あるいは、頭脳警察、はっぴいえんど等の日本のロックを崇拝する部員等、様々なグループや個人が、その時の状況に応じて、7〜8組出演する事になっている。

 秀も軽音楽クラブに入部する以前、よく客席に足を運んだが、3年生あたりのグループには、かなりの腕前の人達もいて、結構刺激になったものだった。
 その「軽音楽クラブ・コンサート」のステージに、秀も立とうと思ったのだ。

 先日の予餞会では、リズム・ギターの入らないトリオ演奏であり、ドラマーも本来はギタリストで、しかもベンチャーズをよく知らない先輩であったので、そのあたりにも納得がいかない部分があった。 
 是非とも、4人編成での演奏を実現させたかったのである。

 秀はベーシストの砂田と話し合った。
「今度の軽音コンサート、出ようよ。」
 秀の言葉に、砂田は可もなく不可もない表情でうなずいたが、
「いいけど、ギターもう一人とドラムはどうする?」
 秀の腹づもりは決まっていた。
「君のクラスで、クリスマス・パーティーやった時のバンドのメンバーがいただろう。」
「ああ、オカ・バンドね。」
「あの時のドラムと、えーと、SG持ってた人。」
「中尾と小林か。」
「そうだ、中尾と小林。彼ら、一緒にやらないかな。」
 秀は、冬休み前の彼らとの一度だけのセッションが、ずっとイメージに残っていた。
「あいつら、ブラバンで忙しいからね。できるかどうかわからないけど、一応声をかけてみるよ。」
「そうしてくれ。」

 その日の放課後、砂田が中尾 丈と小林浩二を演劇部室に連れてきた。
「話は聞いたよ。軽音コンサート、出てもいいよ。」
 中尾が大きな目を輝かせながら言った。小林も、落ち着いた物腰ながら、
「ベンチャーズって、けっこう面白そうだもんな。一緒にやろうぜ。」
と、積極的だ。
「こいつは話が早い。じゃ、明日ベンチャーズのレコード持って来るから。当日は7〜8曲演りたいんだけど、あと10日ぐらいしかないね。大丈夫かなあ。」
 秀の言葉に中尾と小林からは、
「なんとかするよ。」
「まあ、どうにかなるだろう。」
と、頼もしい返事が返ってきた。

 高校入学から約1年、いよいよ秀の「本格的エレキ・ギター人生」の船出の時がやってきた。

      *****青雲編 終わり*****