22グループ結成前夜(2).

 冬休みが明けて、最初の日曜日。
 秀は志垣とともに、お茶の水に向かった。エーストーンの35Wのギター・アンプを買うためである。

 秀の中のイメージとしては、ギターはグレコ、アンプはエーストーン、楽器店はお茶の水の石橋楽器、という図式がいつの間にかできあがっていた。
 ことさらに理由があった訳ではない。ただ、高校の軽音楽クラブのの中で、グレコのギターエーストーンの20Wのアンプ、という組み合わせで所持している者が圧倒的に多く、エルク、グヤトーン等、他のメーカーは少数派だった事も影響しているかもしれない。
 それに、柏駅前のイトーヨーカ堂4階の新星堂に並んでいるギターも、グレコの物が9割方であったし、カタログを見てもグレコのギターが、一番ギブソンやフェンダーの本物にイメージが近いように見えたのだ。
 本物に近い、といっても、ミュージック・ライフ等の音楽雑誌のグラビアで見た外国アーチストと比べているだけの、いい加減な評価ではあるが。

 お茶の水に着いた。前に、少ない予算でギターを買いに来た時とは違い、今回は資金も十分で、買う物もそれを買う店も決まっていたので、ずいぶん気が楽だった。
 志垣は、暇つぶしと話の種に、という事で、秀に同行してきた。帰りに秋葉原に寄って、色々と電気の部品を物色するつもりらしい。

 駿河台の長い坂の、ほとんど入り口に近い所に位置する石橋楽器は、立ち並ぶ楽器店の中でも、一番店構えは狭かったが、その分店内に活気があった。
 お年玉を手にした少年達が、一斉に買い物に繰り出してくる時期でもあり、ギター売り場もアンプ売り場も、10代〜20代の青少年でごった返している。

 人ごみをかき分けて、お目当てのエーストーンの35Wのアンプの前に立った秀は、念のために、その周りの他社のアンプも一通り眺めてみたが、やはりエーストーンの物が、一番スマートで性能が良さそうに見えた。というよりは、思い込みの激しい年頃なので、一度そう思っってしまったら、どうにも止まらないのだ。

 店員を呼んだ。この類いの楽器店によくいるタイプの、長髪にジーンズで、お客に対して敬語を使わないお兄ちゃんだったが、説明は明確かつ丁寧だった。
 エーストーンの35Wアンプが、定価の2割引きで買える事が分ると、秀は残ったアルバイト料にお年玉の一部を足して、ワウ・ファズというアタッチメントも買う事にした。
「オン・ステージ’72」で聴いた、ノーキーのあの歪んだトーンと、ワウワウの効果が一台でまかなえるという、グリコのような装置だ。
 店員のアドバイスで、秀はエルク社製の物を購入した。

 帰り道、重いアンプを手に下げながらも、秀の心はウキウキとはずんでいた。