15. 出会い(3)

 志垣を中にして、秀と眼鏡の男はお互いに名乗りあった。
「虹沢だけど。よろしく。」
「砂田といいます。」
 砂田隆彦は、愛嬌のある顔をしていたが、語り口は落ち着いていた。
 二人の引き合わせが済んで、やることがなくなり、退屈そうに電気関係の本を読み始めた志垣の傍らで、秀と砂田は話を始めた。

「僕は軽音(軽音楽クラブ)に入ってるんだけど、あそこじゃ一緒に組む奴がいないんだ。」
と砂田が切り出した。
「そうなのか。僕は軽音て、なんだか恐そうな人ばかりに見えて、近づかなかったんだけど。」
「入ってみりゃ、そんな事もないけど。とりあえず君も軽音に入れよ。」
「それはいいけど、僕、ベンチャーズをやりたいんだ。砂田君はベンチャーズ知ってる?」
「ふーん、ベンチャーズねえ。名前ぐらいは知ってるけど、あんまり聴いたことないな。でも、とりあえずはベンチャーズやってもいいよ。」
「君はどんなバンドが好きなの?」
「CCRとか、グランド・ファンク、それにストーンズだな。」
 秀は砂田の趣味が、ちょっと自分とは違う気がしたが、とりあえずにしろ、ベンチャーズを一緒にやってくれる、という返事には満足した。
「じゃあ、最初のうちはベンチャーズの曲を増やして、そのうちCCRやグランド・ファンクもやるようにしよう。それでいいかな。」
 秀の提案に、砂田がうなずいて、
「放課後、もうちょっと話をしよう。演劇部室に来てくれ。」
「え、演劇部? なんでまたそんなところへ?」
「僕は軽音の他に演劇部にも入っているんだ。軽音の部室に楽器を置いておくと、他の奴らに勝手に使われたりするから、演劇部室に置いておけば安全なんだよ。」

 軽音楽部と演劇部の両方に所属するベースマン。この奇妙な取り合わせに少々戸惑いながら、秀は放課後、演劇部室に砂田をたずねる事にした。

 退屈な午後の授業が終ると、いつもは一緒に帰る事の多い志垣に「先に帰ってくれ」と告げてから、秀は演劇部室へと向かった。
 二階建ての旧校舎を利用した部室棟の、二階の一番奥の部屋だった。
 その手前にブラスバンド部室と練習室、さらに英語部や生物部、一番手前に軽音楽部室がある。
 演劇部室のドアをノックして中に入ると、砂田が椅子に腰掛けてベースを弾いていた。
 なんと、モズライト型の赤いボディーのベースだった。