45.地平線の彼方に(12)

 続いての「星への旅路」「夢のカリフォルニア」は、比較的気楽に弾けるナンバーであったが、油断したのか「星への旅路」ではイントロで浩二がコードを間違え、「夢のカリフォルニア」では秀がサビのフレーズをつっかえた。
 冷や汗が乾く間もなく、聴くよりも弾いてみると意外に難しい「ハワイ・ファイヴ・オー」だ。
 これは「ライヴ! ザ・ベンチャーズ」のテイクを聴いて以来、ぜひステージでやりたかった念願の曲であった。
 難易度の高いイントロのドラム・ソロを、丈が事もなげに叩き終えると、秀は若干テンポを遅くして、メロディーを弾き始める。「突込み気味のメルのソロの後の、ゆったりしたジェリーの乗り」を再現しようとしたのだ。
 この曲は、やたらと変則的なスケールの指使いが多く、神経を集中させていないと、必ずミスをする。
 「ジャカスカ」とゴキゲンにカッティングする浩二の横で、秀は一人、ギターのフレット・ボードと格闘していた。
 
     

 難曲の後は、秀にとっては一息つける曲だ。
 丈がスネアのロールから、ツイン・バスを踏みながら、16分音符の連打に入る。
「ギミ・サム・ラヴィン」だ。
「アイム・ア・マン」と同様、浩二がワウ・ペダルを踏み、ミュート・カッティングをする。次郎がカウベルを「コンコン」叩き、秀はタンバリンを「シャカシャカ」と振る。
 頃合いを見計らって、タンバリンを後ろのイスの上に置き、「E」のパワー・コード(1度と5度で構成された和音)をロー・ポジションで鳴らす。
 丈のフィル・インの後、秀と次郎は例の単調なリフに入り、4小節で浩二がワウを止めて参加してくると、秀はテーマを弾く。
 アドリブのモチーフは'72年のスタイルだ。まだまだ完全なコピーとは言えなかったが、去年の文化祭に比べれば、格段の出来であった。

      

 コンサートもいよいよ終盤に入った。
 司会の原田の、
「この後、何が出るか僕の方にもわかりません。皆さんの耳で確かめて下さい。」
という、宇月陽介氏のフレーズとともに、秀がディミニッシュ・コードをスライドさせる。
「10番街の殺人」だ。
 丈のフィルインが響きわたり、秀、次郎がオクターブ違いのユニゾンでイントロのリフを弾く。浩二は「スチャスチャ」と切れのいいカッティングが絶好調だ。
 '72年のノーキーのメロディー・ラインが今ひとつしっくりこなかったので、'65年のスタイルからアームを取ったような演奏になったが、聴いて心に沁みるナンバーは、弾くともっと感動を覚えるものだ。メンバー全員、ベンチャーズ・ナンバーの中でも屈指の名曲に、演奏しながら酔いしれていた。
 続いては「オン・ステージ’71」の4面1曲目から「ファイアー」の登場だ。緊迫感のあるメロディーとコード進行が気に入って、春休みが過ぎてから、秀の希望でレパートリーに加わったものだ。
 さらに独自のアレンジ構成でメドレーにした「ダイアモンド・ヘッド〜パイプライン」そして「ウォーク・ドント・ラン」まで一気にたたみかけて、四人は悠然と楽屋に引き揚げた。


             


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